ついに神奈川県コースの核心部とも言える丹沢山地に入る。
丹沢の幕開けは北丹沢より始まり、また東海自然歩道の最高峰である姫次も通過することになる。
本ルートは北丹沢の主脈を姫次まで辿るルートになっているが、姫次手前から真っ直ぐ青根に下ってしまうのはもったいない。
ということで今回はバリエーションコースで神之川まで下るとともに、丹沢最高峰の蛭ヶ岳の山荘に一泊して二日間の行程にしてしまおうという欲張ったプランにした。
主脈自体は概ね穏やかで歩きやすいが、麓から標高差があるために焼山に登るのが一番苦労するところだろう。
風巻の頭の辺りも道がかなり荒れていて神経を使う。
また、蛭ヶ岳への上りも長い階段が待っているので軽い気持ちでは登れないが、山頂では苦労の甲斐がある絶景が待っている。
出発点である西野々に来るのも一苦労である。
僕の場合は終電で高尾駅までやって来て一晩明かし、高尾駅始発の電車で相模湖駅に向かう。
そこから少し待ち、相模湖駅始発の三ヶ木行きのバスに乗り、終点の三ヶ木で再び少し待つと月夜野行きのバスが来る。
それに乗ると西野々に7:15頃に着く。
なお、東京駅の近くに住んでいる場合は橋本駅から三ヶ木に行くバスに始発で間に合うかも知れない。
通りを右折して路地に入る。
紫陽花の咲く季節だ。
鹿除けのゲートを抜けると早速未舗装の林道に入る。
林道を逸れて山道に入ると、暗い雰囲気の沢に降りてくる。
焼山登山口バス停からの道と合流する。
同じバスに乗っていて焼山登山口で降りたハイカーたちとも合流した。
さてここからは焼山まで一直線に上っていく。
印象としてはそれほど険しくもなく、また九十九折と穏やかな道が交互に現れたりするので気分的には変化に富んでいて面白いのだが、如何せんこの上りが長いので、序盤から大きく体力を消耗してしまう。
季節にもよるだろうが、この区間はヤマビルが多いのも嫌なところだ。
しかしここのヤマビルは全体的に小さく、力も弱いような気がする。
しかし嫌らしいものは嫌らしい。
取ろうと摘んでも丸まって必死に抵抗してくる。
ああ、もう……
しかし丹沢の入口となるこの焼山の登山も中々魅力あるものである。
植林地のようだが、人工林特有の整然とした陰気臭さはなく、雑木林に馴染んでいて程良く野趣に富んでいる。
基本的には九十九折で標高を稼ぐが、ところによっては階段もあり、よく歩かれているのだろう整備された道だ。
九十九折の上りをこなすと……
穏やかな尾根道が少し続く。
基本的にこの繰り返しである。
この上りをこなせば少し楽だな、と思うと気力も沸いてくるのでこの構成は良い。
尾根を離れて谷を少しトラバースしたところからが、焼山への上りでは一番辛いところだ。
急な九十九折が続く。
ここは流石に一息に、とはいかない。
しかしここをこなせば山頂はもう目の前だ。
再び尾根に取り付くと焼山頂上への分岐。
巻き道もあるが、当然頂上を目指す。
白樺の森が現れると……
8:50、焼山山頂に到着。
鉄塔の展望台がある。
焼山は1060m。
麓は310mだったのでここまで一気に750mも標高を稼いだ。
展望台に上ってみる。
宮ヶ瀬湖が見えた。
ここで朝食にゼリーを食べた。
ちなみに僕のお気に入りは「朝バナナ」。
程良い甘さで喉越しも良く、エネルギー効率も良い。
山頂を離れるとすぐに巻き道に合流。
しばらく穏やかな道が続く。
ここまでの疲れを癒してくれるような爽快な道だ。
道端には花期を終えた一人静が沢山生えている。
そよ風が樹々の間を吹き抜けてきて涼しい。
気持ちいいなあ。
それにしても静かだ。
まだ朝早いということもあるが、こんなメルヘンチックな素晴らしい森の道を独り占めできるなんて最高の気分だ。
平丸への下山路が分岐する。
ここが一つ目のエスケープルートになる。
が、あまり踏み跡は明瞭でなさそうだ。
却って迷うかもしれない。
穏やかな道を気持ちよく歩いていると黍殻山頂上への道が分岐する。
しかし、黍殻山はあまりそそらないピークだ。
眺望もないそうなので、ここは巻き道を行くことにした。
巻き道でも良い雰囲気だ。
しばらく行くと黍殻山頂上からの道と合流し、その先で太平への下山路がある。
二つ目のエスケープルートだ。
避難小屋があるようだ。
ちょっと見に行ってみよう。
開けた草原に降りてきた。
これが黍殻避難小屋のようだ。
プレハブ小屋のようだが最近建て替えたのかとても綺麗で、何の問題もなくここで一泊出来そうだ。
トイレもある。
少し坂を上ると青根への下山路が分岐する。
本ルートはここから青根に下るが、今回はバリエーションコースを辿るのでこのまま主脈を歩く。
しかしここで下ってしまうのは本当にもったいない。
せめて姫次までは行くべきだろう。
この先の八丁坂の頭分岐からも青根に下れる。
姫次への上りが始まる。
このダラダラとした上りは地味に辛い。
こういう変化に乏しい緩い上りはちょっと苦手だ。
道が平坦になると途中にベンチがあり、傍らに標柱がある。
「東海自然歩道最高標高地点 標高一、四三三米」とある。
とても地味なのだが……こんなところが最高峰なのか……
というか、ここが姫次の山頂なのだろうか。
10:30、開けたところに出てきた。
ここで袖平山と蛭ヶ岳への道が分岐している。
流石にちょっと疲れたな。
少し長めに休憩した。
姫次から蛭ヶ岳を望む。
さて、今日はコースを逸れてこれからあそこへ向かうぞ。
まずは鞍部に向かって下っていく。
この辺りが鞍部だろうか。
木階段だ。
歩幅が合わなくてちょっと辛い上りだ。
小さなピークを二つ越えるとようやく蛭ヶ岳への上りが始まる。
この辺りから木階段や木道が山頂まで続く。
正直言って苦しい道だ。
ガレた谷地に入ると樹林が切れて視界が開ける。
西丹沢の主稜と犬越路が見渡せる。
No.7コースではあの鞍部を越える。
で、上を見上げると……
うへえ、まだあるのか……
きっつ……
もう息も絶え絶え、喘ぎながらの上りだ。
ベンチがあったので少し休む。
ぐおお……
もう少し!
12:05、蛭ヶ岳に到着!
神奈川県最高峰!
1673m!
バッタリ。
文字通りベンチにバッタリと倒れ込んでしばらく天を仰いでいた。
西丹沢の主稜。
東丹沢の主脈。
北丹沢の主脈。
辿ってきた尾根だ。
西丹沢、東丹沢に比べるとやはり穏やかな山容だ。
高原のような雰囲気すらある。
宮ヶ瀬湖とその向こうの相模原市街の広がる関東平野。
まさに360度見渡せる素晴らしい展望だ。
蛭ヶ岳山荘。
今日の宿だ。
しかしちょっと着くのが早すぎたようだ。
受付も始まっていない。
とりあえず持参した弁当(梅干御握り)を使ったあと、寝転がって昼寝した。
受付を済ませて更に中で昼寝しているとようやく日も傾いてきた。
寝ている間に他の宿泊客も集ってきたようだ。
17時に夕食(レトルトカレー)を済ませ、外で山荘で買ったビールを飲みながら西丹沢の峰々に沈んでいく太陽を眺める。
うーん、最高だ。
……しかし思ったより寒いな。
長袖長ズボンを持ってきていて良かった。
それでも寒いのだが……
今まで気付かなかったのだが、山頂には灯台ツツジが咲いていた。
可愛らしい花だ。
夕日に照らされてようやく富士山がシルエットを現した。
おお……大きいなあ……
正直今日はガスってて駄目かと思っていたので思わぬ僥倖である。
冬に来るともっと素晴らしい景色が得られるのだろうな……
陽が沈み、相模原の街にも明かりが灯りはじめた。
さて、いい加減寒いので床に入ろう……
消灯は20時。
今日は疲れたな……。
お休みなさい。
2016/06/19(日)
おはようございます。
20時の消灯から翌朝の4時までたっぷり8時間ぐっすり熟睡してしまった。
宿泊客のイビキとか結構うるさかったはずなのだが、余程疲れていたのだろう。
さて、朝食は5時だが、その前にご来光を拝むとしよう。
お、来たぁー……けどめっちゃガスってんな!
お天道様おはようございます。
今日も一日よろしくお願いします。
5:40、朝飯を食べて、支度をして出発。
薄っすらとだがガスの向こうに富士山が見えたので、こちらにも拝んでおいた。
昨日苦労した木階段を軽快に下りていく。
犬越路だ。
今日はあの直下まで下るぞ。
袖平山と風巻の頭を望む。
中々険しそうだ。
6:45、労せず姫次の分岐に到着。
少し休憩して袖平山を目指す。
お、ここは「東海自然歩道 日帰りハイキング①」(山と渓谷社)で「姫次付近の笹原の道と富士山」としてドーンと富士山が写った写真のところだろうか。
確かに薄っすらと富士山が見えるが……秋ぐらいならもっと空気が澄んでいるかな。
7:00、緩やかな上りをこなすとあっという間に袖平山に着いてしまった。
蛭ヶ岳がよく見えた。
蛭ヶ岳山荘の宿泊客は皆、西丹沢の主稜か東丹沢の主脈に向かったのだろう。
この時間はまさに僕が北丹沢を独り占めと言った感じでとても静かだ。
ベンチに寝転がり、空を眺めながら風の音に耳を澄ますととても心地よかった。
しばし瞑想。
風巻の頭に向かって下る。
犬越路がよく見えた。
ううーん、峠を見るとワクワクするな。
痩せ尾根の急坂だが、この辺りはまだ普通に歩ける。
ちょっとガレてきたな。
おっかねー……
ガレた急坂を慎重に下っていく。
途中鎖場も一ヶ所ある。
案の定転倒して腕を擦り剥いてしまった。
痛い……
風巻の頭への上り。
ガレ場で少し神経を使ったが、体力的には特に労せず8:00、風巻の頭に到着。
頑丈そうな休憩舎がある。
風巻の頭からの下りも気を抜けない。
ガレた急坂が続く。
土嚢や木階段も随所にあって整備はされている感じだが、地形的にどうしても神経を使う。
しばらくすると神之川の水音が近づいてくる。
ようやく神之川に降りてきたようだ。
橋を渡る。
8:50、車道に出てきた。
しばらく歩くと神之川園地に着く。
トイレがある。
No.7との分岐。
今回はこのまま青根に向かう。
ここで県道76号に合流する。
県道76号は犬越路を越える登山県道だ。
しばらく神之川沿いの何もない道が続く。
うーん、退屈だな……
ここには長者舎山荘があったそうだが、平成21年に解体されたらしい。
前述の「東海自然歩道 日帰りハイキング」でもここに一泊して犬越路を越えるのが良いと書いてあるが、登山の拠点にするにはちょっと微妙なところにあるな。
この辺りは長者舎集落跡のようで、分校などもあったらしいが、関東大震災で壊滅して廃村になったようだ。
今は跡形もない。
更にしばらく歩くと神之川が釣り場になっている。
エビラ沢の滝だ。
滝壺で人が泳いでいたので近付くのは遠慮した。
キャンプ場を後に坂を上っていくと音久和集落に入った。
対岸には月夜野集落があり、北丹沢の最奥の集落だ。
ここに来るまで冗長な道がダラダラと続く。
No.7でまた戻ると思うと憂鬱だ。
一度集落を離れ、小屋戸沢を越えると青根集落に入る。
ここで本ルートと合流した。
諏訪神社の前で左折して県道を離れる。
諏訪神社の境内には一際目を引く大きな御神木があった。
無事下山できたことを感謝し、参拝した。
郵便局の裏手から旧国道に出てくる。
ここでNo.5、と合流。
11:00、東野バス停に到着。
ゴール。
うーん、最後の車道歩きが長かったな!
この後、いやしの湯まで降り、乗合タクシーを予約すると何とすぐ来てくれるとのことなので、16時まで待つことなくやまなみ温泉に到着した。
やまなみ温泉で二日分の汗を流し、軽く食事をとって酒も飲み、藤野駅に向かい、帰路に就いた。
翌日は少し体調を崩し、風邪気味になってしまった。
夕暮れを見るのに外に居すぎたかな……
丹沢山系最高峰にして最深部にある蛭ヶ岳の登頂、お疲れ様でした。1日目CT280、2日目CT385にも及ぶけっこうな健脚コースだったと思います。しかも登山口から蛭ヶ岳まで標高差にして1400M近くあり一日にして富士山五合目(2350M)から富士山山頂(3776M)に到達するのに匹敵するけっこうな山行だったと思われます。しかも活動期に入った山ヒルの攻撃!を受けながら・・・というオマケ付きで。そんな困難を乗り越えて蛭ヶ岳を登頂し、蛭ヶ岳山荘での食事はともかく、山荘から見える夜景やご来光はまたさぞかし格別だったと思います。私は丹沢山系へは、いずれも12月に日帰りで大倉から塔ノ岳往復、塩水橋から丹沢山往復しかやったことがありませんが、mcbethさんのレポをみて、夏に丹沢のこのコースを行くのもいいなぁと思いました。次のレポも楽しみにしています!
返信削除今回は少し欲張ったので結構ハードでした。
削除特に蛭ヶ岳への取り付きではバテてしまってヘトヘトでしたね。
もう少し早ければ花の登山が楽しめたのかもしれませんが、緑が鮮やかでこの時期特有の楽しみもありました。
富士山の眺望を期待していたのですが、やはりガスで見えず。
12月でしたらさぞ綺麗に富士山が見えたでしょう。冬にまた来たいと思います。