田沢湖から先達渓谷を遡り、秋田駒ケ岳の麓の乳頭温泉郷へ。
全体的にコースが分かりづらく、迷いやすいコース。
自分もかなり無理やり突破することになった。
乳頭温泉は素晴らしいところなので是非訪れてほしい。
今回は前回行かなかった乳頭温泉郷の方へのコースを歩く。
12月の田沢湖。
冬の寒々しい空気に包まれている。
12月になって初雪が降ったようだ。
山には朝霧が立ち込めている。
お手柔らかに頼むぞ。
そして、ここから林道になるようだ。
まだ穏やかに見える。
右へ。
先行きが不安すぎる。
だんだん雪が増えてきたな。
乗り越えて行きますよ……
ずっとこの調子だとありがたいのだが、先行者たちの情報によると、このコースの先行きはかなり不安だ。
積雪しているせいで橋の状態が分からないのが恐ろしい。
まあ、最悪踏み抜いても死ぬような高度ではないけど……怪我するのは嫌だしなあ。
コースはここで一度、先達川沿いの道を離れ、大黒沢沿いに上っていくのだが……
先行者たちはこの先でみんな道をロストして撤退しているようだ。
このまま先達川沿いの林道で迂回できないだろうか?
積雪で凍りついた鉄骨の上を平均台歩きするのは絶対に危ないし……
大黒沢もそこそこ流れがあって渡渉は難しそうだ。
これは諦めるしかなさそうだな。
どうやら水力発電所の施設のようである。
つまり、ここまではコースであることは疑いようがない。
しかし、先行者たちはこの先で皆、道をロストして大黒沢の渡渉箇所を見つけられていない。
であれば、ここにある橋を使わせてもらう方が楽だろう。
もしかして、コースマップや国土地理院の地図は間違いで、これが本来の道なのでは、と浮足立ったが、踏み跡は藪に消えて道をロスト。
仕方ないので、山の斜面の歩きやすいところを適当に進んだ。
要はコースの続きである、斜面の上にある林道に合流してしまえば良いのだ。
幸い、冬枯れで藪漕ぎもそれほどしなくて良いので、さほど苦労せず斜面上の林道に立つことができた。
まあ、少し疲れたけどな……
ううむ、これは多少遠回りでも現役の林道で迂回した方が良いな。
思っていたより雪が多いが、快適快適。
気持ちいいな。
予想外だ……
スノーシューを持ってくるべきだった。
迂回終了。
日が当たっているところは雪が緩い。
ザクザク進むぞ。
標識もないので、このまま林道を進んでしまおう。
どうせ進む先は同じなのだ。
林道から見える山々。
ここからコースは再び先達川沿いの林道に降りるのだが……
降りるための道は見当たらない。
というかあっても雪で分からない。
ここでリタイヤした先行者もいる。
しかし、ここまで来て引き返したくはない。
下へ降りる斜面……見たところ断崖絶壁というほどではない。
行けないか?
何とかなるもんだね。
登り返すのは絶対に不可能だけど。
国土地理院の地図にも一応ちゃんと記載はされているんだがな。
しかし、すっかり雪景色になってしまった。
スタート地点ではこんなに雪はなかったのにな。
難関脱出完了!
ほっと一安心。
なお、コースは車道脇の遊歩道を歩くことになっているのだが、この雪の中を歩くのが面倒なので、普通に車道を歩くことにする。
坂を上っていく。
道路脇の雪の中に標識が見える……
夏は普通に歩けるのかね?
僕はもちろんこのまま車道を歩く。
元駐日独大使のツァール氏が称えたことからそう呼ばれているそうだ。
確かに美しい森だ。
やって来ました、憧れの秘湯・乳頭温泉郷。
こんな山奥にあるとは、最高のロケーションだ。
まさに秘湯。
その中でもこの鶴の湯本陣は国の文化財にもなっている。
木造の平屋に茅葺屋根が素朴な日本の原風景を想起させる。
少し早く着きすぎたので、1時間ほど散策した後に受付を済ませる。
部屋はこんな感じ。
良いねえ。
さて、日が沈む前に露天風呂に入ろう。
脇を川が流れる開放的な混浴露天風呂だ。
お湯は温めで、いつまでも入っていられる素晴らしい湯だ。
思っていたよりも雪が降っていたのも冬の情緒を増し、日本人で良かったと心から思う瞬間であった。
1時間も長風呂してしまった。
郷土料理尽くしで最高だ。
日本酒はもっきりで。
特にご飯を団子にしてきのこ汁に浸したものが格別だ。
こまち団子というそうだ。
味噌汁に山芋の団子が入っているもので、これがまた絶品であった。
大満足の夕食であった。
冬の夜風が火照った体を冷ましてくれて心地よい。
雪の中の宿の灯は昼にも増して情緒深く、冬の澄んだ空に浮かぶ月に酔いしれながら、夜は更けていった。
翌朝。
早朝に露天風呂を浴びる。
ううむ、最高の朝だな。
もうしばらく逗留していたいが、今日はもう帰らねばならない。
朝食を頂いて出発。
今日はあまり天気が良くないようだ。
まずは鶴の湯本陣脇の鶴の湯神社へ。
今日も無事歩けますように。
やはりスノーシューを持ってくるべきだった。
この後、コースが昨日以上の苦難になるとは、このときはまだ知らなかった……
標識があって助かった。
斜面を降りるようだな。
頑張ろう。
急斜面が登りづらい……
適当に登るか……
九十九折で斜面を登っていたようだ。
それにしても……しんどい……
峠に到着。
やれやれ……
あとは下りかなあ。
太もも辺りまで雪に埋まってしまってにっちもさっちも行かなくなってしまった。
これは時間と根気が要るぞ……
まだか……
そうこうしていると、空に晴れ間が出てきた。
良い兆候だ。
やっとトラバースが終わった……!
これで少しは進みが速くなるだろう。
沢を慎重に渡渉する。
しかし、ここで少し道迷い。
国土地理院の地図だと蟹場温泉に向かってやや北回りで向かうことになっているが、道が見当たらない。
どうやら真っ直ぐ車道に向かうのが正解のようだ。
夏は藪になってるかもな。
積雪していて良かったのかも知れない。
それにしても、疲れた……
車で辿り着けないという意味では、乳頭温泉郷では孫六温泉が一番の秘湯かも知れない。
(送迎車は通れるようだが……)
何だか久しぶりだなあ。
小さな橋を渡る。
ここは乳頭温泉郷の名の由来にもなっている、乳頭山の登山口でもあるようだ。
孫六温泉に到着。
良い雰囲気だ〜。如何にも秘湯という感じ。
鶴の湯温泉とはまた違った良さがある。
ここもいつか泊まってみたいなあ。
雪が降ってきた……
コースはこのまま黒湯温泉を抜けていくのだが、黒湯温泉が冬季休業中で道が通行止めに。
ならばと車道で迂回しようとしたのだが、雪が深くて断念。
もう少しすれば除雪された道路に出たかも知れないが……
どうせ同じところに戻ってくるだけなので、無理して行く必要もないと考え直し、来た道を引き返すことにした。
ここは大釜温泉。
本庄市にあった子吉小学校の廃校舎を移築したものだそうだ。
本当、良い雰囲気の温泉ばかりだなあ。
先ほど断念したコースもここで合流している。
田沢湖ビールも飲むぞ。
ああ、旨い。
歩いたあとの温そばは格別だ。
今回も楽しい旅であった。
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