今回の旅の核心部である。
蓬莱山をグルっと一周してくる周回コースだが、姥ヶ平、鎌沼、酸ヶ平の辺りにかけては特に景観が素晴らしく、桃源郷へ迷い込んだかと思わず唖然としてしまうほどだ。
No.25雄国沼を通って猫魔ヶ岳に登るみちと並ぶ福島県コースの2大景勝地であることは言うに及ばない。
惜しむらくはあまり時間が取れなかったこと……!
一切経山や吾妻小富士にも登ってみたかった!
次回は時間がゆっくり取れるような計画を立てて来よう。
No.21の終点からNo.22の起点まで数百メートルあるが、連絡コースとしては割愛する。
左手に一切経山や東吾妻山を見ながら歩く。
浄土平に到着。
とりあえずレストハウスに入り休憩……したいのだが、平日にも関わらず凄い盛況だ。
食堂も30分待ちとやらで利用できない。
仕方なく軽食コーナーで豚汁を食べる。
すでに正午をまわってしまっている。
No.21に時間を掛けすぎた。
出来れば日没までに今日の宿である高湯温泉まで降りたい。
浄土平から高湯温泉までを3時間と見積もると、No.22コースに割ける時間は今から3時間しかない。
うーむ、仕方ない。
本当はゆっくりしたかったのだが、休憩もそこそこに出発する。
早速浄土平の木道を歩いていく。
行く手に見える紅葉している山が蓬莱山だろう。
分岐点だ。
周回コースなので帰りはここに戻ってくるわけだが、何となく時計回りで行くことにした。
秋色の錦を纏った蓬莱山が早速目を楽しませてくれる。
下界ではまだ色づきはじめてもない木々の葉が、ここではもうこれから秋の盛りのような様相だ。
美しい。
振り返ると吾妻小富士が。
凄まじい火口だ。
この景色だけでももう非日常感が。
まるで異世界に来たようだ。
上りを終えると行く手になだらかな東吾妻山が見える。
姥ヶ平に入る。
東吾妻山と前大巓に挟まれた平地で、冬の厳しい西風のため木々が生えないのだという。
再び木道を歩いていく。
姥ヶ平を抜けると……
!!!
鎌沼だ……!
絶句。
日本にもまだこんな景色があったんだねえ。
思わず呆然とするほど美しい。
ただあるがままの自然が目の前に広がっている。
今まで見た景色の中でも、この景色は屈指に入る。
しかも、毎度の幸運なのだが、こういう感動の瞬間には突如として人気が消えて、まるで世界に僕一人が立っているような錯覚を覚えるのだ。
この池の畔でのんびりコーヒーなんて飲んだらもう最高だろうな。
実に……実に惜しいことに……今は時間がない……
それにしても本当に異世界に迷い込んでしまったかのような非現実的な景色だ。
ここは本当に日本なのだろうか。
後ろ髪を引かれながら鎌沼を後にする。
本当に美しいところだった。
酸ヶ平に入る。
大小の池塘を眺めることのできる湿原だ。
一切経山への入口にもなっている。
吾妻小富士、桶沼、安達太良山を眺めながら道を下る。
本当に素晴らしいところであった。
また来たいな。
最後に一切経山を仰ぎ見る。
いつかはあの頂へ。
浄土平に戻ってきた。
さあ、少し休憩して高湯温泉へ下ろう。
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