東海自然歩道、最後の神奈川県コースになった。
西丹沢から甲相国境尾根を辿り、山中湖畔に降りて甲斐国に入る。
ラストステージらしくほぼ全てが山道の、22.8km、標準タイム11時間40分のハードなコースだ。
僕の能力では体力的、時間的にも厳しいので、今回は途中の菰釣山避難小屋に一泊して踏破することにした。
やはり尾根に取り付くまでが最も苦しく、尾根に取り付いてからも菰釣山まではアップダウンも厳しく体力を消耗する。
菰釣山から先はアップダウンも減り、しだいに穏やかな尾根歩きになり、ブナの美林を楽しむ余裕も出てくる。
苦しい道のりを辿った先に待っている、高指山からの山中湖と富士山の眺望は感動ものである。
8:25、大滝橋バス停に到着。
関東もようやく梅雨が明け、安定した晴天の得られる休日が訪れた。
今回は無人の小屋に山中泊ということで、インターネットから神奈川県警に登山届を提出しておいた。
梅雨明け後の晴天の休日だというのにバスはいつもより人が疎らであった。
ハイカーたちはアルプスなどへ移ってしまったのだろうか。
畦ヶ丸避難小屋まではNo.9と重複であるので慣れた感じで進んでいく。
やはり7月より人気が少ない感じがする。
大滝を左手にトラバースしていく。
今回は滝壺へは降りずにそのままコースを行く。
今日は体力温存のためになるべく寄り道はしない。
荷物はなるべく軽くしたつもりだが、やはり水が重い。
菰釣山避難小屋付近に水場があるらしいが、あまりアテにはできない。
1日当たり1L、予備に500mLで合計2.5Lを背負う。
沢を渡る。
鎖伝いに上る。
緩やかなトラバース。
9:20、一軒家避難小屋を通過。
今日は夏の強い陽射しが谷筋まで届いてきてとても明るい雰囲気だ。
苔生した岩と木々の緑が陽に照らされて美しい。
沢沿いに歩いていく。
大滝峠から小尾根に取り付く。
大滝峠上から急坂が始まる。
コース中最も苦しいところだ。
10:40、畦ヶ丸避難小屋に着いた。
疲れた……
少し休憩。
さて、ここでNo.9と別れ、No.8と合流する。
モロクボ沢ノ頭を目指す。
難なくモロクボ沢ノ頭に到着。
ここでNo.8と別れ、初めてNo.10単独区間に入る。
甲相国境尾根に取り付くと、美しいブナ林が広がる。
この辺りからはほとんど人気はなくなる。
痩せ尾根だ。
少し雲が出てきたか。
少し上ると大界木山。
11:45、通過する。
細かいアップダウンが続く。
前半の疲労も尾を引いていて、再び疲れてきた。
12:05、城ヶ尾峠に到着。
椅子に倒れ込み、天を仰ぐ。
少し長めに休憩を取った。
ちょうど昼時なのでシリアルバーを食べた。
疲労していて喉を通りにくいが、腹は空いていたので無理矢理詰め込む。
水を節約したいのだが、喉が渇く。
少し重量増になるが、夏場はゼリーの方が良かったか……と少し後悔。
城ヶ尾峠は歴史ある峠のようで、相模国と甲斐国を結ぶ要衝であったようだ。
名前からもそれが伺える。
ここから古道を辿り山梨県道志村には降りれるが、丹沢側の古道は荒廃しているようだ。
少し上ると城ヶ尾山。
空が開けている。
ブナ林の尾根を辿る。
13:00、中ノ丸を通過。
急な下りだ。
階段が整備されている。
ありがたい。
中ノ丸を過ぎると少しの間穏やかな印象になる。
13:10、ブナ沢ノ頭を通過。
ちょっと苦しい上りだ。
お、色鮮やかなタマゴダケだ。
食べれば美味らしいが……
穏やかで歩きやすい道だ。
13:25、ブナ沢乗越を通過。
ここから少し山梨側に下ると水場があるが、水の節約の甲斐あって今日は1Lで済みそうだ。
13:30、菰釣山避難小屋に到着。
ブナ沢乗越からの上りで右脹脛が攣っていたので、予定より早く到着できて良かった。
ここが今日の宿だ。
中は清潔で快適に一晩明かせそうである。
ストーブでコーヒーを沸かして飲んだ。
ああ美味い……
荷解きをして、スキットルからウィスキーを飲んで少し昼寝する。
さて、日が沈む前に夕飯にしよう。
トマトソースにソーセージとひよこ豆を入れて煮るだけ。
手抜きである。
アルコールストーブは山行での利用は初めてだったので少々まごついた。
微風で炎が逸れるとかなり熱効率が落ちるようだ。
風防でクッカーをしっかり覆わないと駄目らしい。
コーヒーを沸かすのに少しアルコールを無駄にしたが、夕飯では多すぎた。
難しいな。
小ビールとライ麦パン、クリームチーズを付け合わせる。
あまり食欲がないので、小屋の日誌を見ながらゆっくり食べた。
パンは一切れで十分だったな……
2016/08/07(日)
5:50、朝靄の中、小屋を出発。
昨日は貸し切りかと思っていたら18:30頃、一人男性が来てこの日の宿泊客は二人であった。
19:00頃に日が沈むともうやることもないので、二人とも言葉も交わさず早々に床に就いた。
男性はエアマットだが、僕はクローズドセルマットで、寝心地は良いとは言えない、ないよりはマシ程度の代物だ。
気温は最適で寝苦しいこともなかったが、慣れないこともあって中々寝付けなかった。
それでも22:00を過ぎるとようやく翌朝の4:00頃まで一睡出来た。
嵩張らないし次回はエアマットを持参しよう。
今朝もコーヒーを沸かして飲んだが、何かあまり美味くない。
今朝はハウスブレンドだが、昨日飲んだイタリアンブレンドの方が香り高くて美味かったな。
そうこうするうちに男性は荷造りを終えて先に発った。
僕も後を追う。
地図から分析して、菰釣山への上りは険しいと思っていたのだが、実際はそうでもない。
朝一番でまだ元気なこともあり、軽快に上っていく。
06:05、菰釣山に到着。
西側に展望が開けるらしいのだが、生憎ガスで何も見えない。
ここがコースの最高標高点のようだ。
霧の中歩みを進める。
06:25、ブナノ丸を通過。
霧が晴れてきた。
06:45、油沢ノ頭に到着。
腹が空いてきたのでゼリーを食べた。
07:00、樅ノ木沢の頭を通過。
階段を上る。
朝靄に朝陽が差してきて、幻想的な雰囲気だ。
07:20、西沢ノ頭を通過。
しばらく穏やかな道が続き、朝陽に照らされたブナの美林をゆっくりと鑑賞できる。
おお……これは……
白昼夢を見ているような幻想的な風景だ……
こんな風景があったんだな……
その後も緩やかなアップダウンが続くが、とにかくブナ林が美しく、高揚した気分で歩いていく。
都内では猛暑日らしいが、尾根では冷たい風が吹き付けてきて肌寒いぐらいだ。
火照った体を冷やしてくれて爽快だ。
気持ちいい。
07:40、ほとんど苦労することなく石保土山に到着。
少し休憩。
空が開けていて明るい雰囲気だ。
まだしばらく穏やかな道が続く。
ああ、この辺りは本当に最高の道だ。
こんな美しい天然林を独り占めである。
と、唐突に急な下りがあった。
下ったところの鞍部が水ノ木分岐。
送電塔だ。
南側の眺望。
少しトラバースする。
08:10、山伏峠分岐に到着。
城ヶ尾峠、ブナ沢乗越以来のエスケープポイントだ。
このまま高指山を目指す。
急な下り。
ここは少しおっかない。
慎重に下る。
ブナ林が続くが、笹薮が少しうるさくなってくる。
アブラチャン林が現れる。
青い実を付けている。
再びブナ林。
日当たりの良い斜面を上ると……
08:40、富士岬平に到着。
ここで初めて山中湖と富士山の眺望が得られた。
ここまでの苦しい道のりを思うと感動も一入である。
晴れているのだが……残念ながら富士山には雲が蟠っていて裾野が見えるのみである。
おっ、撫子が咲いていた。
可憐で美しい。
少し坂を上ると高指山に到着。
草原の先に山中湖と富士山を眺める。
草原に腰を下ろし、しばらく景色を見ていた。
旅情を掻き立てる美しい風景だ。
ここまで歩いてきた甲斐があった。
高指山周辺には大根草の花が沢山咲いていた。
高指山を下ると山中湖村平野へ下る道が分岐する。
ここで尾根を離れ、山梨県へ下る。
木陰が無くなったので陽射しが厳しい。
ようやく暑さを感じる。
遊歩道のような雰囲気に。
別荘の家屋も現れる。
おっ!1日ぶりにアスファルトが復活。
県道に合流。
そのまま直進する。
平野バス停には向かわず、途中で県道を右に逸れる。
しばらく舗装道を歩き、国道413号に突き当たるところが平野。
ここが東海自然歩道の神奈川県と山梨県コースの分岐点だ。
10:00、ようやくのゴール。
ちょうど自販機があったのでソーダを買って呷る。
ふう、達成感が込み上げた。
国道を北に少し進むと石割の湯がある。
ここで二日間の汗を流した。
特に檜露天風呂がぬる湯で気持ち良かった。
少しすると富士山駅行きのバスが来たので、駅に向かう。
富士山駅に到着。
バスの中では疲れが出て、船を漕いでいた。
この後近くの店で吉田うどんを食べ、高速バスで東京駅に向かい、帰路に就いた。
東海自然歩道、神奈川県コースを踏破した。
神奈川県はとにかく丹沢で登山の面白さ、楽しさを学んだと感じた。
これまでは山は単なるコースの通過点というような認識だったが、丹沢は花、滝、樹々等、これまでになかった美しい自然が豊富で、山を歩くことそのこと自体を楽しいと感じた。
さあ、次回からは再び関東ふれあいの道を歩く。
今回は泊まりで二日間の行程だったが、やはり日帰りの方が気楽で良い。
コメント遅くなりましたが東海自然歩道、神奈川県コースの踏破おめでとうございます。また、お疲れさまでした。
返信削除今回は避難小屋に一泊したという事で、何か不自由な点などありませんでしたか?
参考にしたいと思いますので、気が付いた点など教えて頂けると有難いのですが、宜しくお願いします。
くれぐれも事故や怪我の無い様、気を付けて下さい。今後もブログ楽しみにしています。(^_^)
ありがとうございます。
削除初避難小屋泊ということで多少不安はあったのですが、全然問題ありませんでした。
やはり普段寝ている布団のような寝心地は期待するべくもないのは当然ですが、ここは工夫と馴れしだいで何とかなりそうです。
強いて言えば、虫の羽音、同小屋で宿泊される方の呼吸や寝返りの音が気になるようであれば耳栓ぐらいは持参していくと良いかもしれません。
でも自然ならではの虫の音や葉擦れの音を聞きながら眠るのもオツなものですよ。