公式では距離は17.4km、所要時間5時間45分の千葉県コースでは最長である。
(ちなみに関東ふれあいの道最長コースは茨城コースNo.18『水の恵みと水田地帯のみち』26.5km)
このコースを連絡コースより先に歩いた理由は……なんだろう、海沿いのパノラマは天気の良い日に楽しみたかったのかもしれない。自分でも覚えていない。
佐貫町駅に到着である。
駅のホームに降り立った途端にポツポツと雨が降り始めるなど、天気は全然よろしくない。
何もこんな日に歩かなくても……と思うが、No.26を歩いてすっかりウォーキング欲に火が点いてしまったまま半月近く週末の雨で焦らされた挙句、この週末も土日は雨の予報となれば、午前中までは天気はもつと聞けば多少の無理は仕方あるまい。
しかし、意外とこれから山に行こうとしていると見られるハイカー達は多い。鹿野山行きの始発バスも満席になるほどだ。
さてNo.25コース始点(正規には終点)はバス終点「神野寺」から少し歩いた先にある白鳥神社である。
由来によればこの地で猛威を振るっていた阿久留王を日本武尊(ヤマトタケル)が征伐し、亡くなった後に白鳥となって鹿野山に飛翔してきた、という伝承に基づく神社であるらしい。
鬱蒼とした木々に参道が覆われ厳かな雰囲気のある神社だが、なんと信じられないことにゴルフコースが境内を横切っている……(写真中央を横切る白っぽい石畳をゴルフ場のカートが横切って行く)
ゴルフ場を建てるなとは言わないが、せめてこういう伝統あるものにぐらいは配慮してほしいものである……
白鳥神社の前にある九十九谷展望台。
確かに見渡す限りの房総の山々が眼下に広がっている。やっぱ天気の良い日にくれば良かったかなあ……
山の木々も曇天の下どこか寒々しく感じる。
冬の日には壮大な雲海が現れることもあるという。
九十九谷を描いたものとして東山魁夷の「残照」なども有名であるらしい。(僕は知らなかったけど)
さて、今さっき来た道だが神野寺に向かう。
連絡コースで歩いた県道93号だが、鹿野山を縦断してふもとの西粟倉まで続いている。
No.25コースは連絡コースと接続するマザー牧場まで県道93号を下っていく形となる。(正規ルートだと登る。今回のコースは逆周りだと全体として下りが多く、ちょっとズルした気分に)
妙に人馴れした雌の野良犬が見送りを務めてくれた。
もしかして放し飼いされてるのだろうか。
あぐらなんてかいてリラックスしてやがるな、愛い奴め。(飼ったことはないけど大の犬好きを自負している)
神野寺に到着。なかなか立派な寺であるので一見の価値はある。そういえば鹿野山と言えば昭和54年に神野寺で飼っていたトラが脱走して1ヶ月近くも逃走したという事件があったらしく、僕が鹿野山に行くと言うと年配の方々が「ああトラの……」と口にするぐらいなので当時はそれなりのニュースになったのだろうか。僕は生まれてもいないので知る由もないが……
神野寺は山岳信仰の対象になっていて、鹿野山には佐貫、市宿、六手、福岡、粟倉、湊より至る6つの山道があったとされ、県道脇にも何回か古道・旧道の類と思しき道を確認できた。機会があれば辿ってみたいものだ。
と、ここで痛恨のミスをする。
ここがNo.25コースのチェックポイントとなる神野寺仁王門である。険しい顔をした立派な金剛力士2体が寺を守護していた。
しかし……僕はここでチェックポイント用の写真を撮り忘れた。
このとき何故かチェックポイントのことなど完全に頭から抜け落ちていて、マザー牧場まで下ってきたところで「そういえばチェックポイントはどこだったっけ」と地図を見て青ざめたのであった。
仕方ないので1週間後連絡コースを歩くときにバスに乗って撮りに来るつもりだったのだが、非情にも最終バスは行ってしまうし……次に来る機会はいつだろう。いずれにせよ千葉県の認定証が欲しければ再訪の必要がある。
神野寺バス停の脇に
はガソリンスタンド?の廃墟が佇んでいた。
うーむ、濃厚な昭和のレトロな息吹を感じる。コンクリートの壁に色褪せたボクシングジムの会員募集広告があるとこなどもかなりグッとくるものがある。
ちなみに意外にも鹿野山山頂付近には小さな村程度に民家や商店が栄えている。県道が通っているので、立地のイメージほど不便はしないのだろうか。
さて、こんな道を下っていくと……
道脇に古道発見!
気持ち程度のバリケードと「立入禁止」の文字が。
鹿野山測地観測所入口に到着。
地磁気の観測を行っているらしい。山中にある国家のハイテク機関……なんとなくそそるものがある。
観測所脇に由緒ありそうな古びた石碑が。
彫られた文字は意外と風化してることもなく凝視すれば読めそうではあるが……ちょっと達筆すぎて僕には解読できませんね。
裏の「施主鹿野山寺……」はかろうじて読める。
そして石碑の奥には朱に彩られた「春日神社」と記された鳥居が。
これは……行かないわけにはいかないだろう。なんか呼ばれている気がする。
こういうところを参拝しておくと御利益があるものだ。
奥の方に進むと……む?もう一つ鳥居が。
こっちの方が石造で若干立派な鳥居だ。階段を上った先は妙にこじんまりとした本堂が。
風情の欠片も感じられない現代風の引き戸が閉められていて御本尊を拝むことはできなかった。なんだか却って不気味なのであえて引き戸を開けることはせず、一礼して階段を引きかえそうと振り返るとそこには……
僕は鳥居右側の道を県道脇から歩いてきたのだが、鳥居の眼下を見ると、どうも元は県道からではないちゃんとした立派な参道があったような道跡が見てとれる。
これも旧道の一種だろう。
鹿野山とは白鳥・熊野・春日峰の三峰の総称であり、かつてそれぞれの峰に白鳥神社、熊野神社、春日神社があったことに由来するという。
ということはこの春日神社は今は忘れられたように県道脇の森に静かに佇むのみであるが、かつては参拝の賑わいを見せた由緒ある神社ということだろう。かつての参道の光景が今にも目の前に浮かぶようで、しばし知りもしないかつてを偲ぶような心持ちにさせられた。
県道163号との分岐点だ。
再度旧道と思われる道を発見。林の下の土を踏みしめる気持ちの良さそうな道だ。
ロープに破れた布が引っかかっていて判読不能だが、恐らく立入禁止の類の文句だろう。
県道に切り取られるようにして反対側には旧道の続きのような道形が確認できた。これを歩いていくとどこに行くのか……非常に……非常に気になりはしたが、こういう道に文字通り寄り道していてはキリがなさそうだし、何より千葉県最長コースを限られた時間内で歩こうとしているのだから、今日のところは好奇心を自重することにした。
マザー牧場に到着。No.25-26連絡コースとの接続ポイントとなる。
出来ればここらで昼食をとりたかったのだが、マザー牧場に入るには高い入場料が……
仕方ないので空腹を無視して先を急ぐ。(いざとなればカロリーメイトがリュックサックに入っている)
マザー牧場から林道起点に入る道は入れなくなっているので、迂回路を通って石射太郎山を目指す。
鹿野山林道に復帰するまで少し分かりにくい道が続く。道なりに下っていくのが正解。(途中階段あり)
迂回路と林道の接続ポイントに到着。階段を下りてくるといきなりトンネルが出迎えてくれる。
林道のトンネルに遭遇したのは実はこれが初めてなのだが、照明などもちろんなく、延長はそれほどないものの、意外と暗いので懐中電灯などあると心強いと思った。
森の中の暗闇は結構怖い。
通ったときはトンネルの出現にビビっていたのか気付かなかったが、トンネル前めっちゃ倒木してるじゃねえか。
長い林道を緩やかに下っていく。
途中写真のような治水のための小さなダムのような土木工事を発見した。
しばらく歩くと国道465号の桁下を潜る。
途中鹿野山トンネルを通るのだが、トンネル出口付近の倒木が少し怖かった。
曇りの日でも人気の皆無な林道は気持ちいいものだが、晴れた日ならなお良いだろう。
国道を潜り、横断し、再度横断し、石射太郎山の山道に入っていく。
ここで食べ損ねた昼飯を国道沿いなどに期待して検索してみたが……ここ周辺に飲食店はおろか民家や店舗は皆無であるようだ。
これからの登山に備えて少し体力を補っておきたかったのだが……仕方あるまい。
山に向けて道は登りはじめた。
少し歩いた先に数軒の民家があるのだが、コースがそのうちの一軒に向けて進んでいき、やがてそのまま家の敷地内に入るような感じになっていて道を間違えたか、としばし思ったが、民家の脇に獣道のように続く一条の道がコースの続きになっているようでほっとした。
これが正解の道。
道というか……生活道じゃないのこれ。
ここから山道に入る。
最初の竹林は結構悪路だ。
道の真ん中にタケノコがニュッと頭を出していてなんだか笑ってしまった。
途中これ本当?みたいな傾斜の勾配があり、必死こいて登った。下りとか危なくないのかな……
しかし全区間舗装道を歩いた鹿野山と違い石射太郎山は山らしい山道を歩く。
林道も好きだが、こういう道も最近は良いと思えるように調教されてきた。
うっ、こんな山中に家が……?
妖怪ハウス?鬼太郎でも住んでいるのだろうか……
実際には単なる廃墟に他ならないが……
うーむ、山の所有者が管理のために住んでいたのかな。
それにしてもこんなところを平然とコース指定してるのは流石である(笑)
ところで、山中の森を歩いている間にパラパラと再び雨が降り出したようだが、多少の雨なら森の木々が雨除けになってくれるので、幸いにも調度良い雨宿りになったわけである。
葉にあたる雨粒の弾ける音を聞きながら道を進む。
No.24コースとの接続ポイントに到着した。
ここからの眺めも中々である。
石射太郎山とは台田久保という巨人が鹿野山からこの山に向けて「石射たろう」と言って矢を放ったという伝承から「石射太郎」と名がついたという。
伝承通りこの山からは良質の石が取れるらしく、鋸山に似た小さな採石場の跡が見られた。
石射太郎山からの眺望。
雨降らしの厚い雲が立ちこめてきた。
ここから植畑上郷バス停に向けて山を下る。
採石場の跡。
石が矩形に切り出されている。
薄暗い森の急な石階段を下る。雨に濡れて危ないので注意。
山を下ると高宕林道の起点に出た。
下りてきた道の脇にトンネルがあるが、立入禁止のバリケードが設置されている。
しかし、奥の方に人影が見えたのだが……
高宕林道を歩く。
しばらく歩けば市道に出るが、そんなに長くはなく、こちらからは緩やかな下りになる。途中数軒民家もある。
ときおり見晴らしの良い水田が道脇に現れる。
ゴールはもうすぐだ。
市道に出てきた。
バス停はすぐ近くにあり、No.24終点及びNo.25起点の案内標識を確認した。
No.25コースはこれにてゴールである。
21.4kmを4時間40分で踏破した。
そんなに寄り道はしてないはずなのだが、割と公式距離よりも伸びてしまったのは何故だろう……
ちなみにこの後バスの時刻を確認すると2時間近く先まで便がなかったため、国道を通り西粟倉まで3km弱を更に歩いた。
道中期待していたラーメンつくもはすでに閉店、結局寒さと空腹を抱えながら、暖かい飯にありつけたのは西粟倉の小さな定食屋であった。
粟倉からコミュニティバスに乗り、更に日東バスに乗り換え君津駅に着いた頃にはすっかり暗くなっていた。
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