関東ふれあいの道全コース踏破認定証が届いた。
これで名実ともに関東ふれあいの道完全踏破となる。
実は最近は、先だって始めてしまった東北自然歩道の方にすっかり心移りしてしまい、関東ふれあいの道の番外編の方はあまりモチベーションが湧いていなかったりする……
のだが、せっかくなので、色々と振り返ってみようと思う。
関東ふれあいの道を歩き始めたのは2013年の3月23日……と記録にはある。
実はなぜ関東ふれあいの道を歩き始めたのかよく覚えていない。
2013年は仕事を始めて3年目……確かあの頃は割と暇だった。
週末がもったいないと思いネットか何かで調べたのだろう。
それ以前に鋸山に登ったことがあったので、そのときに見た標識をもとに見つけたのかもしれない。
それ以前は自転車で河川敷を走ったりダム巡りをする程度で、ハイキングにはほとんど興味はなかった。
古い土木構造物には予てより興味があったし、それが高じて今の仕事にも就いた。
遠出する目的と言えば専らそういうものを見にいくためだった。
それだけに鋸山の石切り場を見たときの感動は大きかったと思う。
鋸山を起点にしたかったのと、まずは家から近い千葉県を歩きたかったことから逆コースで関東ふれあいの道を歩きはじめた。
最初の頃はジーパン・チノパンにTシャツ・ワイシャツ・ポロシャツに革靴という、およそハイキングするとは思えない服装であった。
千葉県のNo.11コースでようやくメレルのウォーキングシューズを買い、茨城県のNo.14でモンベルの動きやすいパンツを買った。
まあ逆に言えばそんな街歩きのような格好でも関東ふれあいの道の大抵のコースは歩けてしまう。
カメラは最初はニコンのCOOLPIX L26を使っていた。
多分写れば良いぐらいの気持ちで適当に買ったものだろう。
雨だろうが曇りだろうが週末とあらば出かけるわ、ピンボケはするわ、水平は取れてないわ白飛びしてるわで今見返すとなかなか酷い写真を量産している。
しかし関東ふれあいの道を歩いていると本当にたくさん写真を撮る。
そうすると良い写真が撮りたいと思ったのか、電気店でそれなりに悩んで、以後長い付き合いになるリコーのGR DIGITAL Ⅳを千葉県No.21コースから使い始めている。
三脚を買ったのも確か同時期である。
ここで少し話を逸れて道具の話をしたい。
まず前述のメレルのウォーキングシューズとはカメレオンストームゴアテックスである。
最初は2世代目を使っていたが、買い換えて今は5世代目を使っている。
ネットのレビューを見ると濡れた路面で滑りやすいなどと割と不評を買っているが、個人的にはかなり気に入っていて、今後も使い続けたいと思っている靴である。
まずソールがしっかりしていてクッション性が高いために長距離歩いていても疲れにくい、靴擦れしにくいというのが最大の長所である。
それでいて軽く、ゴアテックスによる防水もかなり信頼性が置けて、多少の水溜りや積雪ぐらいならほぼ問題ないぐらいである。
グリップは確かに弱いかもしれない……が、オンロードでもオフロードでもオールラウンドで活躍するのがこの靴の良いところだ。
次にGR DIGITAL Ⅳ。
これは語り出すと正直止まらなくなりそうなのだが、このカメラを選んで本当に良かった。
単焦点28mmはスナップにはまさに最適の画角だ。
ズームが無くて使いづらいということはない。
却ってカメラの前であれこれ悩まずに済む。
遠ければ近寄れば良いだけである。
28mmは直感的に見える風景のほぼ全てを切り取る画角で、「お、良い景色だ」と思ったら電源を入れてその場でシャッターを切れば良いだけなのである。
このカメラはオートに入れて全ておまかせでも最適の写真を出してくれる。
被写界深度が深く、少し絞ればパンフォーカスするので風景撮影がメインならAFもいらないと思う。
また、コンパクトで軽いので気軽に歩き旅に持っていこうと思える素敵なカメラだ。
KINGのレインボー8段三脚。
これも良い買い物だった。
軽さ、長さ、コンパクトさのバランスが絶妙である。
脚部の固定にネジを使わないので手早くセッティングできるのも良い。
もっとも、GRD4は手振れ補正もあるので、チェックポイントで自撮りするとき以外はほぼ全く使わないのだが……
実は先日、新しいカメラを買ったので、近いうちに写真と一緒に紹介したいと思う。
RAWデータの編集なんかも覚えていこうと思うのだが、なかなか難しそうである。
話を戻そう。
2013年11月30日、関東ふれあいの道の茨城県コースに入った。
茨城県は通っていた大学が茨城県にあったため、千葉県に次いで馴染みのある県である。
千葉県コースでは海岸沿いの道などもあり、それなりに面白かったが、茨城県ではハイキングの更なる奥深さを知る。
雄大な霞ヶ浦湖畔のロングウォーク、筑波連山縦走の本格的な山歩き。
広がる果樹園……
千葉県内は近いこともあり、ときおり寝坊なんかしても十分歩けたりしたが、始発からでないと一日がもったいないと感じはじめたのもこの頃である。
交通アクセスが悪いところも多くなってくる。
また、茨城県はコースマップが分かりづらく、標識の不備もときおりあり、地図と睨めっこしたり、迷いに迷ってあわや遭難しかけたことなんかもあった。
2014年2月22日、栃木県コースに入る。
栃木県は最もコースの数が多い県である。
それだけに思い出も多い。
まずは新設のコースを歩き、北に向かった。
山間部の少ない長閑な道の多いコースだったが、栃木県を抜けて陸奥国の入口、福島県に到達したときは随分遠いところへ来たものだと思った。
一転して西へ向かうと、下野平野に出た。
関東平野を象徴するような見渡す限りの田んぼ道を、夏の暑い日にフラフラになりながら歩いたことを思い出す。
やがて足尾山地に入ると、忘れもしない49kmの「巨石と杉並木のみち」を歩いたことを思い出す。
秋の麗らかな気持ちの良い日だったが、終盤は疲労と靴擦れに喘ぎ、這々の体でゴールしたときには快哉を叫びたい心境であった。
雪の山脈を抜けると、辺境の地を思わせる渡良瀬川沿いの足尾の集落に辿り着く。
雪と戯れながら歩くのはこれが始めてで、俗世から隔絶されたような足尾の地の幽玄の雰囲気が楽しかった。
庚申山で初めて本格的な雪山登山を体験したが、結果は敗退。
まあ……ノートレースで初の雪山でむしろよくあそこまで頑張ったと思う。
高価な登山靴やアイゼンなどを買ってやたらと散財したのも……良い思い出だろうか……。
2015年1月12日、群馬県に入る。
関東でどの県が一番好きか?と問われれば今の私は間違いなく群馬県と答えるだろう。
群馬県は素晴らしいところである。
また、その群馬県の魅力をほぼ余すところなく巡っている関東ふれあいの道も素晴らしい。
渡良瀬川の巨岩の転がる清流、それに沿って走るわたらせ渓谷鉄道のノスタルジーな風景。
そして何と言っても上毛三山の山腹の自然の優美さと、平野から見上げる威容と、山頂から眺める群馬県の姿と言ったら……思い出すだけで溜息の出るような美しさである。
自然の美しさ、山の美しさというものを群馬県で初めて知ったような気持ちである。
まさに人生の忘れられない美しい思い出であった。
由緒ある古刹や天然の温泉、地元の伝統ある郷土料理など、他にも魅力は挙げれば切りがないほどである。
赤城山では再び雪に苦しめられ、妙義山では崖の登攀に泣きそうになったりしたが、それもまた良い思い出である。
2016年1月16日、埼玉県に入る。
これまでどんどん北西に向かい、起点の千葉県から離れていたのが、埼玉県からは南下して千葉県へ向かっていくような雰囲気になる。
埼玉県は序盤のNo.9でいきなり雪に苦しめられたことを思い出す。(なかなか懲りないな)
秩父盆地は箱庭のような独特の景観で、外周の山を歩いていくとその全容を一望できて面白かった。
徐々に春めいていく山の稜線を歩いていくのも気持ちが良かったことを思い出す。
峠の茶屋も多く、旅情を楽しめる歩きであった。
終盤では沢のゴルジュを歩くという他には無いコースも印象に残る。
2016年4月29日、東京都に入る。
多くの人にとっては東京と言えば高層ビルの立ち並ぶ都会をイメージするだろうが、奥地にはまだこんなに自然が残っているのだということを印象付けてくれる。
奥多摩から高尾山に向けて山間部をメインにコースが構成されているが、寺社などの歴史を辿るコースが無く、やや残念な感じもする。
コース自体も少なく、あっという間に終わってしまう。
他県との繋ぎを考えると仕方ないのかもしれないが、正直に言ってあまり印象に残らない。
ハイキング自体は快適に出来るよう整備されているだけにもったいない。
2016年8月21日、いよいよ最後の県、神奈川県に入る。
前半は里山から丹沢を望み、後半は湘南の海岸から三浦半島の磯の道に入っていく。
特に後半は非常にバリエーションに富んでいて面白い。
千葉県以来に砂浜沿いに歩くのも楽しいし、何と言っても磯伝いの道を堪能できるのは三浦半島ならではだろう。
独特の景観に圧倒され、美しさに心満たされる。
荷物の軽量化にも関心を持ち始める。
神奈川県と言えば関東ふれあいの道も素晴らしいが、東海自然歩道の丹沢の首都圏とは思えない山深さと自然の豊かさも無視できない。
特に渓流や滝、丹沢の稜線の雄大さは一見の価値があるほど美しい。
そして2016年12月30日、3年と9ヶ月を経て、千葉県へ戻ってきた。
前述のとおり、大きな感動はなかった。
しかし、こうして文章にしてみると、長い長い旅だったのだと改めて思った。
ひょんなことから始まった旅が、僕の人生を変えてしまった。
しかしやり遂げられて良かった。心からそう思う。
交通費や道具を買うのに結構な時間とお金を浪費したが、その全てが無駄ではない。
身を以って経験したことこそが真に価値のあることなのだと今は思う。
まだ見ぬ景色を見に、とりあえず東北を次の目標としてまだまだ歩こうと思う。
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